晴れ☼びより

介護や介護に関連する医療について綴るブログです。

介護スタッフの家庭ドラマ その3

1型糖尿病と家族関係

 

 1型糖尿病のマコさんは、体内のリンパ球が誤って膵臓の細胞を破壊してしまうため膵臓インスリンの生産をすることができなくなりました。

 

 そのため体は、疲れやすく、のどが渇き、頻尿となり体重が減少するという症状が出ます。

 

 1型糖尿病のマコさんが生きて行くには、カロリーを制限し、薬物療法を続けなければならないのです。

 

すなわち、インスリンを注射して血糖値をコントロールするのです。

 

 そのためには、毎食前に異なるインスリンと分量を自分で用意し注射しなければならないのです。

 

 もし、このインスリン注射を怠ると高血糖からケトアシドーシスという症状を発症してしまい、自分の力だけでは身動きすることも呼吸することもできなくなってしまうのです。


困惑の日々

 

 マコさんが1型糖尿病だと診断されたのは、19歳になった年の7月でした。

 

 当時、マコさんは短大へ進学したばかりでした。入学する少し前から糖尿病の自覚症状(疲れやすい、異常にのどが渇く、頻尿、体重の減少)が出ており、まともに学校に通えない日々が続いていました。

 

 母の勧めで病院を受診したマコさんは緊急入院となり、そこで初めて自分が糖尿病だという事を知りました。

 

 確かに甘いものは大好きだし、よく食べるし、ほとんど毎日外食で暴飲暴食の生活を繰り返していたから糖尿病になっても仕方ないかな……、そう思っていたのですが担当医の先生から告げられたのは「1型糖尿病」という病名でした。

 

1型糖尿病とは?

 

 1型糖尿病は、主に自己免疫によっておこる病気です。自分の体のリンパ球があやまって内乱を起こし、自分自身のインスリン工場、膵臓のランゲルハンス島B細胞、の大部分を破壊してしまうことで発病します。

(引用:1型糖尿病とは | 日本IDDMネットワーク 1型糖尿病・1型IDDM

 

 インスリンがほとんど出なくなってしまうこの病気は“一生治りません”。また、生涯インスリン注射が欠かせなくなります。


 このインスリン注射というのは、自分で注射をする薬ですが、これが厄介なことに毎食前に打たなければなりません。その他にも、マコさんの場合は、朝と就寝前にもう一本違うインスリンを打つことが必須となりました。

 

診断から2年後

 

 21歳になったマコさんは大学を辞め、職に就き、お金も自由に使えるようになったため、よく外出をするようになっていました。

 

 マコさんには他にも悩みがありました。三世代家族でマコさんは、孫の位置にあたりますが、特に、祖母との関係が悪かったそうです。祖母と母の関係も悪いので、その影響があったのかもしれませんが、祖母と母が言い合っているところを見るのも聞くのも嫌だったそうです。

 

 家に居ることが苦痛で仕方がなかったマコさんは、毎日仕事が終わると家には帰らず、22時頃まで隣町のインターネットカフェに行って過ごすようになりました。

 

 当然、食事は外食になりますし、その頃はインスリン注射を打つことも億劫になっていました。本当は、食前に打たないといけないものを食べた後に打ったり、少量の食事を摂った時は、インスリンを打たずにいました。

 

 そんな生活を送っていたことで、ある日ついに高血糖からケトアシドーシスという症状を発症してしまい、友人との旅行中に救急車で緊急搬送されるという事態を起こしてしまいました。

 

 この事で反省したマコさんは、今後は高血糖にならないよう努力するぞ!と意気込んだのもつかの間。翌年、またケトアシドーシスで緊急搬送されてしまうことになってしまいました。

 

更に、その半年後にもまた旅行中に同じ症状で倒れ、今度は、ドクターヘリで緊急搬送されたのです。

 

 自己管理が甘かったせいで3度も緊急搬送されたマコさんは、「どうして同じことを繰り返してしまうのか」、その理由を探るためソーシャルワーカーとの面談を勧められました。

 

そして、M病院のソーシャルワーカーと出会いました。


隠れた理由

 

 入院中、2人きりの部屋でソーシャルワーカーと話をしたマコさんは、「なぜインスリン注射の治療を処方通りにできずに高血糖を繰り返してしまうのか」の理由をようやく理解しました。

 

 マコさんは、その時の思いを次のように述べています。

 

 家族関係が悪いことで私は、家族との衝突が絶えませんでした。衝突の度に嫌な思いをしては、また家出のように外出をしました。そこで必然的に外食での暴飲暴食を繰り返してしまい、不満や失望などが原因で、やけになって自分の身を粗末に扱うようになってインスリン注射を処方通りにできなくなってしまいました。
結果ケトアシドーシスで緊急搬送されるほど体調を崩してしまったように思います。

 

 「自分の事なのにずっと気付かなかったのか」と言われれば確かにその通りですが、そのソーシャルワーカーと話をする中で自分の生活や家庭事情を打ち明けるまでは、本当にその理由に気付かなかったのでした。


3週間の安静

 

 ようやく理由がわかったマコさんは、家族の中で唯一頼りにできる母と相談し、「昔、家族で住んでいた古い家があるので、そこを住まいとして、当面は、なるべく家族との接触を避ける」というような解決策を考えました。

 

 主治医からは、「3週間の安静が必要です。」と言われて退院しました。

 

 現在は、古い家で半ばひとり暮らしのように自由気ままに生活しているマコさんは、血糖値をきちんと毎日測り、インスリン注射で血糖コントロールができるようになりました。そして、社会との関わりを少しづつ広げていきたいと考えるようになりました。