晴れ☼びより

介護や介護に関連する医療について綴るブログです。

小さいけど根っこを広げる取り組み

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 当施設は、茨城県北西部に位置する人口約4万2千人の常陸大宮市にあります。高齢者率は、全国や茨城県平均と比べても高く30%を超えており、高齢化が進展している地域です。


 しかし、当施設では利用者の確保に苦労しています。その背景には、人口に対する施設の割り合いが非常に高く、有料老人ホーム・介護施設が23ヵ所、デイサービスは11ヵ所あり、さらに高齢者の多くは国民年金で生活をしている現状があるからです。

 

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地域高齢者の声から始めた「ひより食堂」

 

 当施設の職員が地域の高齢者の家庭を訪問した時のことです。「野菜はあるが肉・魚がない」、「食べに行く店が近くにない」、「1人では、お店に食べに行きづらい」、「食材を買いに行きたくても店が遠い」など、食事に関する多くの訴えがありました。


 そこで、当施設の中で食堂をオープンし、地域の高齢者の方々に利用してもらおうと考えました。食事に関するサービスとして思い浮かぶのは配色サービスですが、この地域に必要なのサービスを考えた時、食材の買い出しや調理が困難な高齢者の方に送迎サービスを行ってひよりに来所してもらい、栄養バランスの取れた食事を供給することも大事であると思ったのです。

 

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ひより食堂の目的と方法

 

【目的】
 全職員が同じ方向を向いてサービス提供できるよう目的を決めました。それは、送迎サービスを行ってひよりに来所してもらい、栄養バランスの取れた食事を提供することにより健康の維持・向上を図るとともに、普段の食生活の見直しや、食育の重要性を周知することで、自立生活の継続および介護予防などを支援する事です。

【対象者の決定】
 利用対象者は、疾病等の理由により見守りが必要で、自力での調理が困難な次のような高齢者です。
・肉や魚の摂取量が少ない
・1人では、お店に食べに行きづらい
・食材を買いに行きたくても店が遠い
・その他、食事を希望する人

【運営方法】
 ひより食堂の運営は次のようにしました。
・サービスの提供は毎週土曜日
・送迎サービスにより昼食を提供(利用料金400円)
・デイルームを使用
・希望により健康チェックを実施

 

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ひより食堂をとおしての喜びや気づき

 

 ひより食堂を活かしてサービスの質を向上させていくには、食事に来ていただく利用者の方々との会話をとおし、当施設の職員個々が喜びや気づきを持ち続けていくことが大切だと思います。オープンから約2年、ここに挙げきれないほどの多くの喜びを得ました。


 以下は、その一例です。


・親にデイサービスに行ってほしいけれど、いやだと言っているので、まずは食堂に行こうと誘うことができるので行きやすい
・ひより周辺の高齢者と会話ができてよい
・独居の高齢者は1人で寂しいけれど、ここに来ると話し相手がいるので楽しい
・大勢で食べると食欲も出るし、おいしい


 またその反面、「ひより食堂に行くとデイサービスを利用しなければならないと思うので、行きにくい」という意見もあり、地域高齢者の声から始めたサービスではありましたが、利用される方の良い意見だけではなく、マイナスの意見があることにも気づけ、今後の課題も見つかりました。

 

 

産労総合研究所「看護のチカラ」2016年5月15号掲載(一部改変)